東京高等裁判所 昭和25年(う)3996号 判決
原審公判調書の記載を閲するに、その第一回から第九回に至る公判調書には第五回を除きいずれも冒頭の部分に於て弁護人Tが出頭した旨明にされているが、たゞ第五回公判調書に於ては其の冒頭に同様の記載がないのである。然るに第五回公判調書の証人訊問の部分に於ては弁護人が直接証人訊問をしたことが記載されているのみならず、其の他の訴訟行為が同一弁護人により為されたことも明記されている。而して右出頭して訴訟行為をした弁護人とは右Tであることは記録上疑う余地がないのであるから、以上の如き関係から観察するときは右第五回公判に於ては事実上右弁護人が終始出頭していたと認められるのみならず、公判調書の記載自体からいつても偶々冒頭の部分にこそ弁護人の氏名の掲記が欠けているものの、前後の記載からして右T弁護人が最初から出頭していて適法に訴訟行為をしたものであることを看取するに充分であるというべきである。而して刑事訴訟規則第四十四条によれば公判調書には弁護人の氏名を記載すべきことを要求してはいるが、弁護人がたゞ一人で他に混同の虞れがないような場合は公判調書毎に弁護人の氏名を繰返して掲げなくても、同一弁護人が出頭したことが判明する程度の記載があれば充分と認むべきであるから、此の点よりするときは本件第五回公判調書の記載に何等右規則の趣旨にもとる点はないのである。論旨は理由がない。